イビサ現代美術館 (Ibiza, Spain)

スペイン、イビサ島。「クラブ天国」の地にある現代美術館。美的センスに溢れ、個人邸宅に足を踏み入れたのではないかと錯覚する。

スペイン、イビサ島にある現代美術館。イビサ島というと、どうしても「クラブ天国」という印象を持ってしまう。ロンドンから飛行機で入った時も飛行機の中は若者で満員。フライト中は若者がアルコールを飲みながら飛行機の中を歩き回って騒いでいて「来る場所ではなかったかなあ」という後悔の念に駆られたが、このイビサ現代美術館を見つけたことで払拭された。

この美術館の存在は認識していなかった。街中を歩いていて、見晴らしの良さそうな場所に向かって坂を上っていく途中に、たまたま見つけたというのが経緯だ。私が入った時は入場無料だった。特に期待することもなく入ったが驚愕した場所だ。館内は地下二階から三階まである。コンパクトだが複雑な構造で、その構造は好きになる現代美術館の要件を満たしている。

館内については、一言で形容すると、とにかく洒落ている。「センスがいい」という形容がしっくりくる。イビサという場所も関係しているのだろう、イビサで生活している人が創り出した空間という感じがする。私はフロアを廻りながら、そのセンスの良さに溜め息が出てしまった。ちょっとした絵が飾ってあったりオブジェが配置されているが、とにかく洒落ている。ここは美術館ではなく「美術と装飾とインテリアに造詣の深い人がデザインした家です」と言われてもおかしくない。ちなみに、著名な作家の作品が展示されているようには見えなかった。ただ、館内の雰囲気、展示の仕方が優れているのか、展示されている作品まですべて秀逸なものに映った。

地下二階には、フロアがガラスになっていて眼下に遺跡のようなものが見える場所があり、驚かされた。説明によると、紀元前600年から紀元後1200年にかけて異なる年代の遺跡が積み重なっているということだ。あまり見たことがない空間だった。訪れる人も少ないのだろう、館内は空いていたため、この秀逸な空間を占拠することができた。一通り館内を廻ったあとこの空間が気になって戻ってきてしまい、誰もいない贅沢な時間を享受し遺跡が見える位置にあるソファーに座り、しばらく館内を眺めていた。なかなか、体感できない空間だ。

人がいないということも魅力を増幅する要因なのだろうが、それにしても秀逸。美術館を出た瞬間、すぐに引き返したくなる衝動に駆られた。観光地にある美術館は、得てして期待外れだったりするが、こういう場所が一般住宅が並んだ一角に普通に存在することがうらやましい。

それにしても、訪問客が少ないというのは不思議だった。私が訪問したのは7月中旬。夏のピークの時だ。にもかかわらず、館内にいる人は数えるほどで、遺跡のある地下二階のフロアはしばらく誰もいなかった。勝手な推測だが、この美術館の所有者は、観光客を意識せず、地元の人に素敵な空間を提供することを目的にこの美術館を造り、運営しているのではないかと想像する。

イビサ島に行く際は、是非忘れずに足を運んでいただきたい。

2013年訪問。

​基本情報

​■ 名称:Contemporary Art of Ibiza
■ 住所 : Calle Pintor Narciso Puget s/n, 07800, Ibiza Town, Ibiza, Spain
​■ ホームページ:
https://www.spain.info/en/places-of-interest/ibiza-museum-contemporary-art/