サン・セバスティアン (Spain)

スペイン、バスク地方。バルセロナ、マドリッドとは異なる、ゆったりした空気が流れる美食の街の旧市街で、ほろ酔い気分を楽しむ。

スペインは旅行していて楽しい場所だ。気候がいいし、食べ物が美味しい。マドリッド、バルセロナ、マラガと足を運んだ。観るべき場所はたくさんあるし、生活したら楽しいだろうなと思わせてくれる場所だ。ただ、特にマドリッドとバルセロナは、観光客も含め、人で溢れており、リラックスできない。

スペインは、イタリアとよく比較される。スペイン料理とイタリア料理、博物館、美術館、史跡の数々。欧州での旅行を考えた時、この二つの国は、必ず候補として挙がると思う。私は、この二か国の人と仕事をしたことがあるが、極めて、個人的な印象を言葉で表すと、イタリアは「底抜けの陽気さ」、スペインは「内に秘めた静寂」というものだ。

スペインの人は、話をしていると、陽気さの中に、静寂さ、少し表現を変えると、「影」があるような感じがする。仕事をしていると、「冷静に考えて次へ進む」というプロセスを踏む人が多いというのが個人的な印象だ。これは、スペインと関わる以前に自分が抱えていたイメージとは大きく異なり、非常に驚いたのが、記憶として残っている。

さて、このサン・セバスティアンだが、この場所は、スペイン北部の所謂、バスク地方にある町で、美食の街として名が知れている。このバスク地方に足を運んだ人の話を聞くと、スペインの中でもダントツでオススメと言うことだった。

サン・セバスティアンは、地形だけ見ると、フランス・ニースの小型版という感じだ。海側は、弓なり状になった海岸が広がり、その海岸に沿って歩道が続き、人々が、ゆったりと歩いている。地方都市ということもあるのだろう、人も多くはないし、街も清潔だ。

この街は、ローカルの人に交じって海岸を歩くのもいいだろうし、西にある「モンテ・イゲルド」という丘の上から、海岸線を含めた街の全景を眺めるのもいいだろう。ただ、湾の東に位置する旧市街の散策だけは外さないで欲しい。この場所は、石畳の続く場所で、碁盤目状に通りが走り、五、六階建ての建物に囲まれている。市街の中央には、コンスティトゥシオン広場という、四方を四階建ての建物が囲み、広場に向かって扉と窓が並び、扉の前はバルコニーになっている場所がある。扉には番号が振ってあり、一番から二百番代まであり、不思議な場所・光景であった。確認したところ、この場所は、昔、闘牛場であったということだ。

この旧市街だが、店やレストランが通り沿いに並んでいる。通りは、基本的には歩行者専用でもあり、店やレストランを眺めながら歩くと楽しい。特に、レストラン、バルの類の店が多々あり、少し中を覗くと、ピンチョスと呼ばれる、小さく切ったパンに少量の食べ物が乗せられた食べ物が、カウンターに色鮮やかに並べられ食欲をそそる。また、雑貨やインテリアを扱った店もセンスの良いアイテムが並んでいる。

欧州には、歴史を感じる旧市街は多々あるが、この旧市街は、道が碁盤目状に配置されていること、また、レストラン、バルの類の店が多いということでは、珍しい場所だ。また、店のセンスからは新しい感覚も融合していることが感じられるし、全体的に、ゆったりとした空気が流れている。夜、レストランで食事をして、ほろ酔い気分で散策をするには、うってつけの場所ではないかと思う。

旧市街に面した、市庁舎前のアルメダ通り沿いに並ぶカフェのテラス席に座って、人間観察をするのも楽しい。午後の早い時間は、人も少なかったが、次第に席が埋まる。白ワインを飲む人の姿が目立つ。また、これは、街を歩いていて気付いたのだが、とにかく、犬を連れている人が多い。テラス席にも犬を連れている人がいるし、カフェの前も、犬を連れて歩く人の姿が目立つ。非常に気になって、ホテルの人に訊いてみたが、「スペインでは普通のことですよ」ということだった。マドリッド、バルセロナ、マラガでは、犬が多かったという印象がないので、訪れる方は注意してみていただければと思う。

最後に、カフェ、レストラン、店で会話をした印象では、英語が通じる人は2、3割だ。ちょっと、脇道に入ったカフェの人は、スペイン語しか話さなかったので、観光客が歩く場所は英語を話すということなのだろう。

スペインは、マドリッドとバルセロナは行ったけれど、次、どこに行こうかと悩んでいる方は、是非、サン・セバスティアンを含めた、バスク地方を考えて欲しい。都会とは少し違う、ゆったりとした空気を感じたい方にはうってつけの場所だし、癖になる場所かもしれない。

2019年訪問

基本情報

​■ 名称 : サン・セバスティアン
■ ホームページ:https://www.sansebastianturismoa.eus/en/ (サン・セバスティアン観光局)