​サンセットストリップ (West Hollywood CA, USA)

ロサンゼルスの西、サンセットストリップ。青空に映えるビルボードと、ロック音楽の聖地を巡り、カリフォルニアの空気を感じる。

ロサンゼルスは、よく足を運ぶ場所だ。アメリカ西海岸のアイコン的な都市は、ある種の魔力を放ち、それに引き寄せられるように足を運ぶようになった。最初に足を踏み入れてから三十年程が経過した。それでも、飽きることなく、足を運んでいる。

魅力はいろいろあるが、一番引き付けられたのは、このサンセット・ストリップ(Sunset Strip)のエリアだ。ダウンタウンから西に延びるサンセットブルバード (Sunset Boulevard)が、ハリウッドを過ぎたあたりの1.5マイル (2.4km) 程の通り沿いのエリアを指す。ここには、クラブ、ブティック、レストラン、バー、シアター、ホテルが道路沿いに点在している。また、周辺は高級住宅街ということもあり、雰囲気的には少しスノッブな感じがするが、観光地というよりは、生活感がある場所で、意外と馴染みやすい。

サンセットブルバードを東から走ってくると、クレセントハイツブルバード(Crescent Heights Boulevard) という、交差点角にショッピングエリアがある場所に出る。ここから道路は、左右にうねり始め、サンセットストリップが始まる。アイコン的な場所を列記していくと、まず、右手に著名人御用達のシャトー・マーモントホテル (Chateau Marmont Hotel)、少し進んで、左手に、これも著名人御用達のサンセットタワーホテル(旧アーガイルホテル)(Sunset Tower Hotel, ex: Argyle Hotel)。続いて、右手に、ミュージシャン達が宿泊し、数々の奇行を繰り広げたライオットハウスとして知られるハイアットホテル(現アンダズウェストハリウッド) (Hyatt Hotel / Andaz West Hollywood)、そして、コメディークラブであるコメディーストアー (Comedy Store)。左側には、2015年に閉店したハウスオブブルース (House of Blues/既に建物は解体、その後商業ビルが建立)。さらに、進むと、ラシェネガブルバード(La Cienega Boulevard)と交差し、ここからさらに道路が下り始める。右手にお気に入りのレストラン、メルズドライブイン (Mells Drive In)が見え、その先が、店とレストランが集積したサンセットプラザ (Sunset Plaza)と呼ばれる場所。少し進むと、よく映画や映像に登場したタワーレコード (Tower Record) 跡地が右側に見え、左側には、ブックスープ(Book Soup) というセンスのいい本屋が見える。ここから先がクラブのエリアになる。まず、左手にバイバールーム(Viper Room)、続いて、右手にウィスキーアゴーゴー(Whisky a Go Go)、さらに進んで右手にロキシー(Roxy)。少し先に行くと、かつてのギャザリーズ/キークラブ(現在は1OAK)(Gazzarri’s/Key Club)。ここから先は、店もなくなり、通りは右にカーブして住宅街に入っていく。ここまでが、いわゆるサンセットストリップと呼ばれる場所だ。

まず、この通りで目に入るのが、通り沿いのビルボートだ。通りの左右に配されたビルボードは、「ストリップに来たなあ」という高揚感を引き出してくれるアイテムで、主に、ストリップの開始ポイントから、タワーレコードのあたりまでの道路沿いに並んでいる。青空に映えるビルボートを目にしながら車を走らせると、気持ちがいいし、気分が高揚する。

サンセットプラザからタワーレコードあたりは、通り沿いにレストランや店が集まっていることもあり、比較的、歩いている人の姿がある。このあたりのレストランやカフェのテラス席に座って、通り沿いを眺めながら人間観察をするのが楽しい。少し距離は長いが、サンセット通りの端から端まで歩いてみると、このあたりの雰囲気を感じてもらえると思う。

さて、サンセットストリップのメインアクティビティーは何かであるが、やはり、「夜」になるだろう。西の方に集まっているクラブに是非、足を運んで欲しい。バイバールーム、ウィスキーアゴーゴー、ロキシー、1OAK(かつてのギャザリーズ、キークラブ)。80年代から90年代にかけての勢いはなくなったが、通り沿いに、著名なクラブが集まった場所は稀有であり、ロサンゼルスの風俗と文化を知る上では、是非、足を運んで欲しい場所である。もし、この手のクラブに興味がない方、苦手な方は、車を止めて歩いてみて欲しい。時々、クラブ周辺のエリアに浮浪者っぽい人を目にすることはあるが、基本的には、周辺は高級住宅街であり、危険という感じはしない。また、夜でも、レストランやクラブを訪れる人々が歩いているので、そのような人々を見ながら歩くと楽しいと思う。

尚、クラブは、たいてい始まるのが21時以降なので、ピークは24時頃というのが一般的だ(ここでいう、クラブの定義は、ダンスクラブではなく、ミュージックベニューと理解いただきたい)。サンセットプラザにあるレストランで食事をしてから、どこかのクラブに入るという感じだろうか。サンセットプラザの店は、敷居が高そうに見えるが、格式ばった高級レストランという感じでもなく、意外と庶民的だったりする。レストランのテラス席で食事をしていると、隣にいる人が声を掛けてきて、「再来週から日本に行くんだけど、東京のレストランはどこがいい?」とか、気軽に話をするようなこともあったりする。

さて、一つ問題となるのは、足をどうするかということだ。この場所には車で来ることになるので、アルコールは飲めない。これではつまらない。従い、このサンセットストリップ沿いにあるホテルに宿泊するのがいい。ただ、ホテルと言っても、冒頭に記載したシャトー・マーモントホテル、サンセットタワーホテル、ハイアットホテルのような、ちょっと敷居が高いホテルが多い。私自身、このようなホテルには宿泊したことがない。

では、どうするか、ということで一つ紹介しておく。ベストウェスタン・サンセットプラザ(Best Western Sunset Plaza)だ。私は、いつもここに宿泊している。ベストウェスタウンは庶民的なモーテルチェーンだが、価格も周辺の高級ホテルに比べればリーズナブルだし、何しろロケーションが抜群に良い。隣は、豪勢なサンセットタワーホテル。すぐ近くには、かつてハウスオブブルースがあった。サンセットプラザ、その先のクラブのエリアも問題なく歩いて行ける。クラブで音楽を楽しんだ後、景色を眺めながら歩いて帰ってくることが可能だ。このホテルだが、中庭が素晴らしい。中庭に面した部屋が取れれば最高だ。ちなみに、90年代前半は、一泊100ドル以下で宿泊できたが、今は250ドル以上する。また、昔は、駐車場は無料だったが、今は一泊20ドル程度の追加料金が必要だ。この料金を見ると、「いやあ、物価が上がったなあ」と思うが、まだまだ、この値段で、この場所に宿泊できるのは貴重であり、是非、宿泊してもらえればと思う。

クラブのエリアからベストウェスタン・サンセットプラザまでは歩いて15分ほど。真夜中にクラブを後にし、ほろ酔い気分で歩き始める。週末ともなれば、まだまだ、通りを歩く人の姿がある。そのような人々を見ながら、道路脇にある店のショーウィンドーを眺める。向かって左側には、高台に並ぶ高級住宅が発する灯りが見える。夜風を感じながら、是非、贅沢な夜の散歩を楽しんでもらえればと思う。

最後に一つオススメの場所として、スタールハウス(Stahl House)を紹介しておく。近代建築のアイコン的な場所として1959年に建てられた家屋で一般公開されている。サンセットストリップから丘側に入った高台に位置し、瀟洒なプールと天井から床までのシースルーの建物が特徴で、ロサンゼルスの全景が見渡せる。この場所は映画などの撮影で使われ、ハリウッドヒルズのセンスを感じることができる。このサンセットストリップの北側の丘の上は、セキュリティーが厳しく、車で走り回ってある場所に駐車するだけでも、どこからともなく人が出てきて見られたりするので、気を使う場所だ。そういう意味では、このスタールハウスは、丘の上の雰囲気を知るためでも非常に貴重な場所といえる。ある程度の余裕を持って確認すれば予約できるし、車で来場すると、パーキングスペースが確保されていて嫌な思いをしなくていい。是非、足を運んでいただきたい。

尚、クラブについては、「ロック系ライブハウス」の記事を参照いただきたい。

1991年より2023年まで、十五回程度訪問。

​基本情報

​■ 名称 : サンセット・ストリップ
■ ホームページ: 
https://www.sunsetplaza.com/  (Sunset Plaza)